理事長就任のあいさつ 浦野保範
この度、日本キューバ友好協会の理事長を務めさせて頂くことになりました。
設立から62年の歴史を持つ当協会の理事長職を務めることは想像さえしませんでした。当会に入会した1983年当時は石原忠男先生が理事長を務めていました。歴代の理事長は皆が研究者であると同時に最高学府に職を奉ずる、大学教授・名誉教授であり優れた学識と経験を持たれた正に理事長に相応しい方々でした。
初代理事長の堀真琴さんとは面識ありませんでしたが、政治学者であると同時に参議院議員を2期務めた経歴をお持ちでした。
歴代理事長の実績と学業面での経験と比べますと、私には特筆すべき経歴はありません。理事長の責務が果たせるか今も自問自答しています。経験してきた土俵が余りにも違います。多くの方から不安の念を抱かれたとしても至極当然の事です。
それでも、キューバとキューバの皆さんに対する思いは強くあります。
1977年に初めて就職した商社では5年間キューバとの貿易に携わりました。次の職場でも13年間キューバ貿易に従事しました。都合18年間のキューバとの仕事で、最短1週間から最長5カ月間の駐在生活を14回繰り返し、合計3年2カ月ハバナに滞在する機会を得ました。13年間従事した会社では当会の希代統顧問、キューバ・ラテンアメリカ研究家の新藤通弘さんと私の3人でローテーションを組み、交代でハバナに駐在する体制で臨みました。キューバとの貿易は仕事であり、生活の糧を得るための手段でしたが、仕事を通じて多くのキューバの方々と知り合うことが出来、彼らの中に入っての経験はとても貴重で大切なものになりました。仕事で得た金銭以上の、かけがえのない財産としてキューバが私の中に残りました。その思いは今も変わりません。
1959年1月のキューバ革命勝利後の1961年1月にキューバで始まった「文盲一掃運動」に呼応して日本人有志の会によるキューバに鉛筆を送る活動がありました。同年の4月17日にアメリカ合衆国の傭兵軍がプラヤ・ヒロンを攻撃し、4月19日にキューバは侵略傭兵軍を撃破。翌1962年10月には所謂「キューバ危機」が勃発し、世界中からキューバに注目が集まりました。アメリカのキューバ敵視政策に対してキューバを支持する動きが日本国内でも活発化しました。革命キューバに干渉するアメリカからキューバの主権を守ることを目的として1963年2月16日に日本キューバ友好協会は設立されました。各界各層の有志、革新系の研究者・学者、自由民主党、日本社会党、日本共産党所属の国会議員を含む多彩な人々が参加しての設立でした。
会の規約には『本会は、日本キューバ両国民の相互の理解と友好を深め、あわせて相互の繁栄を願い、世界平和に寄与することを目的とする。』とあります。両国の友好の輪を広げることで更なる平和に繋げていくことが目的です。
皆が平等で平和に暮らせる争いのない社会を築くことを目的としてキューバ革命は起こりました。この理想を蔑ろにする敵視政策をアメリカは革命直後から現在に至るまで執拗に取り続けています。このような理不尽な敵視政策を友好協会は見過ごすことができません。これらの政策には毅然と抗議することも日本キューバ友好協会の役割の一つです。同様にキューバの歴史と文化を一人でも多くの方に知って頂く為の活動も大切です。以前から定例となっているスペイン語教室・サルサ教室・パーカッション教室・料理教室等を含め、新たな活動を定期的に開催してキューバに触れる活動を積極的に行っていきます。
キューバの最新情勢、経済状況を研究者・専門家を招いて講演会を開催することも必要です。より内容の充実した活動を行い、多くの協会員の皆さまの参加を実現させ、新たな協会員が一人でも多く増えるような活動が必要です。
最後になりますが、2016年から9年間友好協会を牽引されてきた工藤昌宏前理事長が大切にしてきた相互理解、世界平和、民主主義を追求する姿勢は活動の根幹を成すものです。これらの考えを受け継いで今後も活動を行うことは言うまでもありません。また、キューバ大使並びに大使館員の皆様との綿密な関係は今後も続けていかねばなりません。そして、当協会と長年に渡る良好な関係を有する組織、団体の皆様の活動に敬意を払うと共に、今後も御協力を賜ります事をお願いして就任のご挨拶と致します。
2025年5月30日
日本キューバ友好協会理事長 浦野保範