2018年11月1日、第73回国連総会は、米国による対キューバ経済封鎖解除決議案「米国の対キューバ経済・通商・金融封鎖解除の必要性」を国連加盟国193か国中189か国という圧倒的多数の国の賛成で採択しました。採択は、1992年以来実に27年連続です。採択に反対したのは米国とイスラエルの2か国だけです（ウクライナ、モルドバは欠席）。しかも、米国は採択の1週間前に的外れで理不尽な修正案まで提出し採択を阻止しようとしました。
この事実は、以下のことを意味しています。第1に、1962以来半世紀以上にわたる米国の対キューバ経済封鎖が今日に至るまで続いてきたこと、つまり半世紀以上にわたって米国はキューバとキューバ国民に打撃を与え続けてきたこと。第2に、世界の圧倒的多数が世界の平和と安定、そしてキューバとの友好と連帯を強く求め、対キューバ経済封鎖の一刻も早い解除を求めていること。第3に、米国はこのような国際社会の強い意思表示に対して長きにわたって背を向け続けてきたことです。そして第4に、にもかかわらずキューバとキューバ国民はそれに屈することなく、強い団結によって封鎖措置に耐え、それを乗り越えてきたことです。
世界が米国の対キューバ経済封鎖解除を求めるのは、キューバとの連帯を強化することはもとより、経済封鎖が国家主権の平等、内政不干渉を定めた国連憲章に反するだけでなく、通商・航行の自由などを定めた国際法にも完全に違反し、またこのような行為が中南米のみならず世界の平和と安定の脅威になっているからに他なりません。しかも、現在の経済封鎖措置は100年も前の1917年に制定された「対敵通商法」などによるもので、その上国内法を対外的に適用するという理不尽なものといわざるを得ません。これに対して、世界各国から批判の声が上がるのは当然のことです。
米国の対キューバ経済封鎖は、いったい誰に、どのような利益をもたらしたのでしょうか。キューバ国民に打撃を与えることが、米国にどのような利益をもたらしたのでしょうか。2015年7月、キューバと米国は54年ぶりに国交を回復し経済封鎖解除に向けて歩みだしたかに見えました。また、１昨年の国連総会では米国は採択に棄権するという消極的な形ではありましたが反対を取り下げ、これによって採択に反対する国はゼロとなりました。採択に際して、米国パワー国連大使は「経済封鎖はキューバ政府ではなく、米国を孤立させた」として経済封鎖政策が誤りであったことを認めました。
しかし、昨年には事態は逆転しました。米国は経済封鎖の解除どころか、封鎖解除を求める世界中の声に再び背を向け、国連総会での封鎖解除案にイスラエルとともに反対に回り、封鎖を強化し始めました。しかも、米国ヘイリー国連大使は採択に際し「キューバ国民の人権と自由が奪われている限り、米国はこの議場で孤立することを恐れない」と述べ、経済封鎖解除を拒否する姿勢を鮮明にしました。しかし、キューバ国民の人権や自由が奪われているという指摘は根拠がないばかりか完全な誤りであることは、実際にキューバを訪れた人ならば誰でもが知っています。それどころか、キューバは積極的に平和主義、国際主義を掲げて世界中に友好と連帯の輪を広げてきました。医療などを通じた国際貢献や核兵器廃絶を求める姿、武器や兵隊より医師や教師を増やす姿は、持続可能な未来社会の方向性を示すものであり、世界中の共感を呼び高く評価されてきました。
問題はそれだけではありません。対キューバ経済封鎖は、中南米の政治経済を不安定にさせ、また世界中に憎悪や軋轢をもたらすだけでなく、持続可能な未来社会を構築するうえでの脅威となっています。国連総会での27年連続での経済封鎖解除決議の採択は、このような脅威を取り除こうという国際社会の強い意思表示に外なりません。
米国による対キューバ経済封鎖は、キューバにとってはもとより、米国にとっても、そして世界にとっても微塵の利益ももたらさないどころか、有害ですらあるということは明白です。このことは、逆に米国の対キューバ経済封鎖の早急な解除こそが、キューバ、米国、そして世界に大きな利益をもたらすことを意味します。圧力、対立、孤立は何も解決しません。対話、友好、連帯、協調、これこそが今求められる全てです。
日本キューバ友好協会は、今回の米国の対応に強く抗議するとともに、世界の政治経済の安定、そしてキューバと米国の真の国交回復の実現のために、米国が国連総会の決議を重く受け止め、対キューバ経済封鎖を即時かつ完全に解除することを強く求めます。
2018年11月1日
日本キューバ友好協会
理事長 工藤昌宏